第三項 【広報業務・リスク&教訓編】
■「鬼ばかりの世間と大家族主義」
前項で敵は身内にありとお話ししましたが、大きな事件の起爆剤となるケースが非常に多いのが取引業者がらみのトラブルです。
長らく終身雇用システムが常識だった日本の会社組織に置いて、自然に根付いたのが社内と社外の人間を、身内と他人という概念で分ける身内意識です。そしてその中間で非常に曖昧な政治的スタンスで存在するのが取引業者です。
お金の流れだけで考えますと、ターゲットはエンドユーザーなわけですから、取引業者は完全なる運命共同体なわけですが、現実には平等な身内と言うよりはどこか僕的イメージが払拭できないのが日本の現状です。取引業者は取引が長くなればなるほど絆の強いパートナーであり、大家族の一員であるはずなのですが、そういうポジショニングにおかれていないのが現実でしょう。
企業は色々な矛盾を抱えて経済活動を行っていますが、この矛盾という澱は弱いところへ蓄積していきます。必然的にヘドロのように、物言わぬ取引業者のところに長い間堆積されていきます。その堆積したヘドロがいつの日にか起爆剤となって大爆発を起こします。「内部告発文書」「怪文書」の発信元のほとんどが社内か、本来愛すべき家族であるはずの取引業者のことが多いのではないでしょうか。
怪文書程度ならばまだ良いのですが、贈収賄、背任、横領など、顔なじみのお取引業者さんが事件の当時者であることも珍しくありません。
お金の流れが複雑であればあるほど、仕入れの窓口の担当者の在任が長ければ長いほど、腐敗臭を伴った澱が沈殿していく可能性は高く、邪悪な魔の手が伸びてくる確率が高いと言えます。そういったことは人の世の常で、損得勘定が絡んでいるので「ある程度は仕方がない」と達観したがゆえに、沈んでいった会社はいくらでもあります。もし会社にそういうルーズな一面が見え隠れする場合は、命取りになるような大きな事件に発展する以前に悪い芽を取り除く必用があります。
つまり、小さな不正も見逃さないモラル作りと組織作りは社内だけの課題に留めずに、一番のパートナーである取引業者を交えて、大家族で構築していかなければならないということです。一日も早く取引業者を「他人」ではなく「身内」の関係に変えていく必用があります。そのためにはまず金ありきではなく「おもいやり」と一緒に商品と金を流すべきです。「おもいやり」という血液が流れていれば、情報や感情の循環は良くなり健全な経営体制が確立されます。
現実的な取り組みで考えれば、情法交換やコミュニケーションをはかれる場として、お取引業者さんの集まりである「友の会」の組織化がまず最優先の仕事でしょう。日本の場合意外とこの「友の会」についての組織論を解説した著作は少ないのですが、日本的経営において、感情と情報のコンセンサスのない烏合の衆のような取引業者を抱えた企業は必ず破綻すると言っても過言ではないでしょう。逆にポジティブに組織化された取引業者はビジネス成功の根幹であるとも言いきれると思います。
日本の自動車産業の成功は、まさしく「系列」という友の会組織の確立にあると言えます。各業種毎の新しい「友の会」組織の確立が論議される時代が来たと言えます。
それは未来へ向けてのポジティブな試行錯誤であるとともに、重要なリスク対策として人情と情報の両側面から取り組まなければならない課題です。



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