東北で唯一、剣道の防具「胴」に漆を塗り命を吹き込む職人が岩手県八幡平市安代地区にいます。 その職人の名前は羽沢良和さん。
農業という職業から漆職人の道に入ったのは、今から20年以上前の羽沢さんが28歳の時。 地元の漆器センターに入り4〜5年間修行を積みました。 そして、独立を考えたとき、漆器の職人ではなく、剣道の防具「胴」の職人になることを選びました。
どんな塗り方をすれば割れたり、剥げたりしないか試行錯誤を繰り返した模索の日々だったと20年の歴史を振り返ります。 現在、東北で漆塗りの胴を作れるのは羽沢さんだけ、全国各地から羽沢さんの胴の注文が入ります。
多いときには、年間600枚以上もの胴を作り上げます。 全てが受注をしてからの完全オーダーメイド。 使う人が思いながら命を吹き込んでいきます。
土台は60本竹胴を使用。 その土台を研磨・木固めといって土台に生漆を染み込ませる下塗り・漆を塗る・・・という工程を4ヶ月かけて行います。 仕上げの漆塗りにおいては10回以上丹念に塗り重ねていくという実に根気と技術の必要とする作業です。
国内で使用される漆の99%は中国産、残り1%の国産漆のうちの70%が浄法寺産。
そして、浄法寺の漆は、金閣寺の修復に使われるほどの高純度。まさに質、量共に日本一の漆です。
国産の漆は、中国産の漆に比べ「ウルシオール」という成分が多く、中国産の漆が粘度が強いのに対し、国産の漆はサラサラとしています。 そのため、幾重にも重ね塗りをし仕上げていく必要があります。 また、国産漆は、中国産に比べ塗膜が堅牢であり、つやが落ちにくい特徴があります。 その国産漆を幾重にも重ねることにより一層、輝きを増し深い味わいを生むのです。
日本一を誇る浄法寺の漆を用いた胴は、約1200年の時を経て今に伝えられる伝統により輝きを増し、 蒔地法という下地を用いて無類の堅牢な強度を持つ胴となります。
浄法寺塗りの歴史は古く、東北最古の古刹である浄法寺の天台寺の僧侶達が自ら作った漆器が地元の人たちに広まったのが浄法寺塗りの漆器のルーツといわれています。
羽沢さんの胴を求める人たちの多くは、高段者の人たち。 全国剣道選手権の優勝者など剣を極めた方たちが愛用しています。 オプションで家紋を入れたり、文字を入れることも可能ですので、 お祝いなどにも喜んでいただけると思います。 羽沢さんは、今までも、これからも「良い物を大切に使ってほしい」という思いで胴を作り続けていきます。
使用後は乾拭きし、外にだしておく。バッグに入れっ放しはNG。