壱鋳堂

伝統と革新が融合した南部鉄器ブランド

2009年に設立された南部鉄器ブランド、壱鋳堂。盛岡にある本社を訪れると、色とりどりの工芸品が並んでいます。南部鉄瓶、ティーポット、南部鉄偶や風鈴、熊鈴など、多くの製品を展開しており、工芸品でありながらもユニークで洗練されたデザインが特徴です。

壱鋳堂は、代表の佐藤康大さんとデザイナーの中村義隆さん二人で立ち上げました。二人は共に鋳鉄メーカーで働いていた同僚。長年一緒に仕事をしてきた二人の雰囲気、相性の良さがインタビューを通して感じられます。

二人で鋳鉄ブランドを立ち上げた経緯について、佐藤さんはこう語ります。「自分たちで考えたアイデア、デザインの鉄器を開発し、国内外の市場で勝負したいと思っていました。」考えたものをカタチにする難しさや葛藤を感じていた二人は、長年の経験を活かして、自分たちで一からブランドを築く決意をしたと言います。

壱鋳堂が誇るデザインと品質の追求

グラフィックデザイナーとして活躍する一方で、鋳鉄工芸品業界に於いても数多くのデザイン実績を持つ中村さん。販売している製品はもちろん、そのパッケージに至るまで洗練されたデザインは、まさにグラフィックデザイナーとしての中村さんのこだわりが詰まった作品なのです。

Designer

中村義隆さん

2004. ニューヨーク近代美術館（MoMA）のカフェで、デザインしたティーポットがサービングポットとして採用される。 2012. 壱鋳堂の「キャストアイアンケトル」でグッドデザイン賞を受賞。

社長の佐藤さんはこう語ります。「うちでは（造型の知識を持つ）デザイナーがデザインから石膏モデルの製作までをやっているので、アイデアをそのままのイメージでカタチにできるんですよ。」

一般的な鉄瓶の製作工程は、まずアイデアをデザインに起こし、デザインが完成したら石膏と呼ばれる最初の原型モデルを作成し、それをもとにつくった金型で鋳型を造型します。その後、鉄を流し込み、冷めたらバリ取りを行い、錆止めのための焼き付けをして、最後に塗装を行い製品化されます。通常、デザインと原型モデルとなる石膏の製作を一括してひとりで行うのは難しく、デザイナーと石膏職人は分業が一般的です。しかし壱鋳堂では、ひとりのデザイナーがすべてを担うことができるため、デザインの造型までの製作工程がスムーズに行えるのです。

南部鉄偶などの小さな製品に関しては、石膏で形成する前に粘土を使用してモデルをつくります。粘土の段階でポーズや重量バランスなどを確認した後、それを石膏で型取り、石膏原型モデルを仕上げていきます。その後鋳型に鉄を流し込み、鉄瓶同様バリ取りと錆止めを施していきます。

壱鋳堂では、本来分業である部分をひとりのデザイナーが担うことで、自分たちが考えたユニークなアイデアをそのまま形におこすことができ、細かい部分の調整もしやすいのです。製品入荷後は、届けたお客様に喜んでもらうため、ひとつひとつ丁寧に検品をし、時には自分たちで修正や仕上げを行っていると言います。自分たちのアイデアをそのままカタチにして市場に届けるということは決して簡単なことではありません。壱鋳堂の二人は、それができる技術と経験、そして業界の知識を豊富に持っています。それが壱鋳堂の最大の魅力であり、強みと言えるのではないでしょうか。

デザイン完成後石膏型をもとにアルミ型がつくられる

作り手からみなさまへのメッセージ

南部鉄器にこれまで馴染がなかった方にも手に取ってもらいやすいようなデザインを特徴としています。南部鉄器を知ってもらう良いきっかけになればと思っています。代表佐藤さん

南部鉄器は長く使えるものですから、私たちが創ったものが皆さんの生活の中で馴染んでいったときに、良いものを買ったと思ってもらえるような愛される商品だったら嬉しいです。デザイナー中村さん

「生型」で造る壱鋳堂の鉄瓶

壱鋳堂の南部鉄器は「生型」という製法でつくられています。「生形」とは、金型などを使い鋳物砂を固めたところに、鉄を流し込む方法。製作スピードがはやく量産に適しています。量産に適するとはいえ、ひとつひとつ鉄を流し込んで製作する上、型から抜く技術など「焼型」とはまた違った特殊な技術を必要とします。

南部鉄瓶

鉄はそもそも銀色で、空気中の湿気でも錆びるのですが、バリ取りなどの加工後、高温で焼き付け酸化被膜をつくることで錆びづらくなります。外側はカシュー漆で塗装されており、さらに焼き付けることで色を定着させます。鉄瓶は直火にかけてお湯を沸かすことができます。色は主に黒と赤（茶色）があります。ゆっくりと沸かすことで湯がとてもまろやかになり、冷ましてもおいしくいただけます。鉄瓶内に茶葉を入れてお湯を沸かすと、鉄分とお茶に含まれるタンニンが化学反応を起こしてお茶が黒くなることがありますので、鉄瓶で沸かした湯でお茶やコーヒーを入れることをおすすめします。また、サイズや種類によってIH非対応のものもございます。IH対応の鉄瓶をお求めの方はご注意ください。

ティーポット

ティーポットは黒以外にもカラー展開がございますが、中をガラスコートしているため直火にかけることはできません。沸かしたお湯をティーポットに入れ急須としてお使いください。鉄瓶のようにお茶が黒く変色することはございません。ティーポットの塗装は非耐熱のウレタンやアクリルを使用しております。直火にかけると変色する恐れがありますのでご注意ください。 ※詳しい使用方法はページ下部「お手入れ方法」をご覧ください。

壱鋳堂の大人気商品、南部鉄偶の魅力

南部鉄偶は、壱鋳堂人気商品のひとつ。これひとつで簡単に鉄分を補給することができます。「地元にゆかりのあるデザインで、南部鉄器の職人さんたちの技術を活かせるものにしたいと考えていました。」

南部鉄偶のシリーズの中でメインとなるこのキャラクターは、遮光器土偶がモチーフになっています。そのかわいらしいデザインから置物として購入する人も多く、テレビで紹介されると全国でまたたく間に人気となりました。これらの南部鉄偶の細かい設計は、中村さんがひとつひとつ彫刻しているものです。南部鉄偶が生まれた当初、アイデアが浮かんだ時にはすでに頭の中にビジュアルのイメージがあり、デザインに描き起こしてから原型モデルをつくるまでそれほど時間はかからなかったと言います。

製品化するまでには工程も多く、新しい商品を製作するにはハードルが高い中で、社長の佐藤さんは「絶対に売れる」と信じて疑わず、積極的に試作に取り組んだと言います。南部鉄偶が販売された当初は、まだ一体のみ。しかし想像以上の人気により、気づいたら他のバリエーションも増えていたと笑いながら語ってくれました。

お手入れ方法

南部鉄瓶　KETTLE

● 新品をご使用になる前鉄瓶の内部を軽くすすいだ後、水を入れお湯を沸かします。この工程を3回ほど繰り返し、沸かしたお湯が濁らなくなったらおいしくお飲みいただけます。 ※ 長期間使用しなかった場合も、同様の作業を行ってください。 ● ご使用後のお手入れご使用後は鉄瓶の中のお湯はそのままにせず、お湯はポットなどに移して空の状態にし、内部を乾燥させてからおしまいください。（ふたを外しておくことで余熱で水気を飛ばすことができますが、足りない場合は少しだけ熱を加えて水気を飛ばしてください。） ● 内部が錆びてお湯が濁ってきたとき最初に軽くすすいで8分目まで水と緑茶や紅茶などのティーパックを2、3個入れ、空焚きに注意しながら水から15～20分程度煮込んでください。そのまま一晩おくと水が真っ黒になります。その後軽くすすぎ、お湯を1～2回沸かしてからご使用ください。これはお茶に含まれるタンニンと鉄分の化学反応を利用した金気止めの方法です。（酸化被膜を形成します） ※ 鉄瓶は使用すると赤褐色の錆びたような斑点ができます。沸かしたお湯が濁ったり錆びた匂いがしなければ問題はありませんので、そのままお使いください。 ※ お取り扱い上の詳しい注意点は商品詳細ページよりご確認ください。

ティーポット　TEAPOT

● 新品をご使用になる前ポットの内部及び茶漉しを水又はぬるま湯でよく洗い、十分にすすいでからご使用ください。ポットの外側に付いた水気は吸収性に優れた柔らかい布を、ポットに押し付けるようにして吸い取ってください。 ● ご使用後のお手入れご使用後も同じように水又はぬるま湯でよく洗い、水気を吸い取ってからおしまいください。注ぎ口の周りやフタの裏、ツルの根元部分などは水気が残りやすく錆の原因となりますのでお気を付け下さい。（※ 鉄錆は無害ですので、そのままご使用を続けても健康衛生上害はございません。) 内面に茶渋が付いたときは、スポンジと中性洗剤で洗って下さい。 ※ お取り扱い上の詳しい注意点は商品詳細ページよりご確認ください。