久慈市のやませ土風館レトロ広場の一角で洋野町種市の特産品である 天然ホヤの加工品を中心に様々な浜の食材をPRし、販売をしている日向真由美さん。 種市の物産品に精通し、商品開発から携わる「はまなす亭」の助っ人。 彼女の目にかなった……口にかなった商品は、多くの人に喜ばれている逸品ばかり。
今回は、日向さんの推薦する「ほや商品」と絶品の「なんばんみそ」をご紹介しましょう。
リアス式の断崖が続く岩手三陸の北部 種市。 この地域の海岸は養殖ができない地形のため、漁家の人々は、天然のウニやほや、海藻を獲ることで生活を支えてきまいた。 その中でも、北三陸のほやは一年中獲ることができ、この地方の人たちは好んで食べてきました。 ほやは、全国的には認知度は高くなく、食べた事のない人や食わず嫌いの多い海の幸と言われています。
実際、私も取材に伺ってほやを初めて食べた一人。 「海のパイナップル」と呼ばれるほやの見た目とは全く異なり、ほのかな心地よい苦味の後に味わい深い甘みと磯の香りが口に広がります。 食感はみずみずしくプルプル、時折シャキシャキとし、柔らかな中にも歯ごたえを感じる何とも形容しがたい美味しさでした。 ほやは、とても繊細な海の幸。 真水がかかると中の身が死んでしまいます。 それと同時に殻の中では、アンモニア臭が発生し始めます。 ぷくっと膨れるのはアンモニアガスがたまるため。
多くの魚屋さんに並ぶほやがふっくらとしているのは、見た目にはハリがあって美味しそうに見えるように、水をかけてしまうからだそう。 まぁすぐに食べることができれば、それでも美味しく食べることはできるんだけれど。刻々とそのアンモニア臭さが強くなってしまうそうです。 「お客さんからほやを送ってくれって頼まれるんだけど、氷を入れて送っても氷がくっついたところから凍傷にかかって死んでしまうんです。 そうするとアンモニア臭くなってしまうから、配送一つにしてもとても気を使わないとね。美味しいほやを届けたいもんね。 そうやって届けたほやを食べてくれて、こんなほや食べた事なかった!って電話や手紙をもらうと本当にうれしいの」 庭さんのお店の壁には、たくさんのお客さんのうれしい声のメッセージが貼られています。
ほやの腸管の中には老廃物がたくさん詰まっていて、 それがほやの身に付いてしまうと老廃物の嫌な臭いで、ほやの風味が損なわれてしまいます。 庭さんは、包丁で腸管をサッと切り裂き、老廃物をほやの身に擦り付けることなく、ハラリと取り除きます。
震災後、いつも殻つきほやをお届けしていたお客様から注文がありました。 震災前は、水揚げしたほやを生簀で数日間養生させ、体内から老廃物を十分に吐かせる処理を行い発送していましたが、その生簀は津波に流されてしまい、以前のような殻つきほやを送ることができませんでした。 苦肉の策でほやをさばいて送ると…… 「今まで食べたほやの中で一番美味しい!!」と……。 新鮮なほやより美味しい?!と複雑な思いもあったが我が腕に自信を持ったエピソードだったそうです。
庭さんはレストランを始めた時に、観光客の激減する冬季に従業員の生活の安定を図るため、 この地域で1年を通じて収穫される天然ほやを使った加工品をつくり雇用を確保しようと考えました。 しかし、地元では新鮮な旨いほやに火を入れるなんてとんでもない発想でした。 「ほやは新鮮が一番、火を入れるなんて馬鹿じゃないか!!」という声が上がりました。 しかし、ほや飯、ほやラーメンなどを様々な商品を開発すると「旨い!!」と絶賛の声に変わりました。 「生はもちろん美味しいけれど、火を通した生のほやとは違う美味しさがあるんだよね!」 庭さんは、先人たちから伝えられてきた食文化に様々なアイディアを加え、商品を作り出してきました。 そのありそうでなかった斬新な発想の商品が、多くの人々に受け入れられ、様々な食品コンクールでも高く評価されてきました。
平成22年岩手県特産品コンクール産業貿易振興協会会長賞
平成23年岩手県ふるさと食品コンクール優良賞
セット内容:麺は多めの140g!たっぷりわかめと美味しいほやのむき身100g、塩ベースのスープ。
「はまなす亭」の前身となる「種市ふるさと物産館」は、平成23年3月11日に発生した東日本大震災により倒壊、廃止施設となってしまいましたが、 レストラン「はまなす亭」で人気の「天然ほやラーメン」をもう一度食べたい!という声にお応えしてお持ち帰り用セットを再開しました。 具材として種市産の「天然ほや」と「ワカメ」が入っていますので、手軽に本格派の味が再現できる商品になっています。 スープの仕上げにほやを入れて火を止めていただくと、より一層、磯の香たっぷりの美味しいスープになりますよ!
石倉さんは、種市で美味しい野菜を栽培する農家さん。 毎日、産直やお店に新鮮な南蛮やトマトなどの野菜を届けています。 種市の農作物の生産者さんは、地元で採れる食材でおいしいものを作ろうという取組みが盛んで、石倉さんも自らこだわりの野菜を育てる中で、何か美味しい加工品が作れないか…と考え、思いついたのが「なんばんみそ」でした。 青南蛮は売るほどある(≧∇≦)ノ彡 そして様々な「なんばんみそ」を試食し、商品開発に取り組みましたが、どれも何か物足りなくピンとこなかったそう。 「自分が美味しいものを食べたい(だから商品に仕上げたいんだ)」というシンプルな気持ちに気付き、自分の中で好きな味、今まで食べてきた馴染みの味を基本に、試行錯誤を繰り返しました。 そしてできたのがこの「石倉さんの辛鮮なんばんみそ」 試しに産直やイベントで販売してみると…… あっという間に人気商品になりました。
「石倉さんの辛鮮なんばんみそ」は、大量の自家栽培の青南蛮を輪切りにし、米麹やザラメ砂糖などの原材料を2時間以上火にかけて丁寧に練り上げていきます。 石倉さんは、誰にも邪魔されない家族が寝静まった夜に、作業を開始します。 火の加減、練り具合によって微妙に変化する味や食感。 製品の出来を一定にするために全ての作業、石倉さん一人で行います。 ゆっくり丁寧に練り上げたなんばんみそは、フレッシュな辛さと絶妙の甘みでもう一口食べたくなる美味しさ。 あつあつのごはんの上にのせるのも、もちろん。 マヨネーズとあえて野菜につけても美味しい、おかずにもなる万能調味料です。 はじめて出展した食品コンクールでは、調味料としての完成度の高さが評価され、これからの活動への激励の意味が込められた平成23年岩手県ふるさと食品コンクール「復興特別賞」を受賞しました。
平成23年岩手県ふるさと食品コンクール 復興特別賞