大正3年に岩手県・盛岡で創業した浅沼醤油店。日本人の食生活になくてはならない味噌・醤油を始め、100年にわたって「安心で安全でおいしいもの」を作り続けてきました。「安心で安全でおいしい」そのための一つの柱となるのが地元産の食材の使用です。岩手の厳しい気候の中で育まれた食材を元に、農家さんと二人三脚で商品の製造・開発に取り組んでいます。浅沼醤油店の商品開発はとても丁寧です。食材の個性を見極め、その魅力を最大限に生かすにはどうしたら良いか。どの食材と組み合わせるとより美味しくなるか。細部にまで気を配って一つの商品が作られます。
大豆アレルギーの子供に醤油を―その想いから始まった「エゴマプロジェクト」浅沼醤油店が自社商品開発に取り組むきっかけとなったのがエゴマとの出会いでした。広い岩手県は食材の宝庫といわれます。その岩手県南部に位置する一関市・大東町。ここでは古くから各家庭でエゴマの栽培が行われていて、江戸時代には「北前船(きたまえぶね)」でエゴマを江戸に出荷していたという記録も残っているほどです。
浅沼醤油店がここを訪れるようになったのは「大豆アレルギーのため醤油を使った給食を食べられない子供がいる」と聞いたことがきっかけです。大豆に替わって醤油を作ることができる材料を探していく中で、一関市大東町でエゴマ油や菜種油を生産・販売している「菜種油の会」に出会いました。菜種油の会」は地元の農家55名が集まり、農薬や化学肥料を使わず菜種やエゴマを生産しています。収穫されたエゴマはエゴマ油に加工されていました。従来醤油は、大豆から油を除いた「脱脂大豆」で作られます。これは、大豆に含まれる油分は発酵できずに酸化してしまうためです。岩手県内には、エゴマ油の搾油も盛んなため「脱脂エゴマ」があります。菜種油の会の人たちと油を搾った後のエゴマで醤油が作れないか―。浅沼醤油店と菜種油の会の挑戦「エゴマプロジェクト」はこうして始まりました。
決して順調ではありませんでしたが「何とかエゴマで醤油を作りたい」という強い思いが研究を支えました。長期に渡り試行錯誤を繰り返した結果、ついに全国初のエゴマ醤油が完成したのです。エゴマは胡麻ではなくシソ科の植物。体内でDHAに変化するα‐リノレン酸が50〜60%含まれているということが近年判明し、注目を集めている食材です。α‐リノレン酸は人体では生成できないので、食品から摂取する必要があります。昔から食べると十年長生きするという伝承があり、そのことから岩手では「じゅうねん」とも呼ばれています。「大豆アレルギーの子供に醤油を使った料理を食べさせたい」という思いから始まったエゴマプロジェクト。現在ではエゴマ醤油をベースにドレッシング、エゴマラー油やエゴマ・マスタードなど、市場のニーズに応えて新しい食品が次々に開発・販売されています。浅沼醤油店が生産者と一緒に取り組んだエゴマプロジェクト。その結果誕生した商品はまさに「消費者に必要で世の中にないもの」といえる商品でした。
国産果実のお酢と岩手県産有機無農薬しょうが岩手県・盛岡は本州の中でも北に位置する冬の冷え込みが厳しいところ。底冷えする冬の寒さに負けないように「冬をあたたかく過ごせる飲み物を作ろう」という想いから浅沼醤油店が造り出したのは「はちみつジンジャー果実酢」シリーズ。長年培った酢の醸造技術で、柚子、りんごやラフランスといった果実で個性的で美味しい果実酢を造りだしました。その酢に合わせるしょうがは、本当に良いものにこだわりたい・・・そんな時に、あるしょうがに出会ったのです。
岩手県産・有機無農薬しょうが岩手県・一関市藤沢町の丸越農園。ここででは無農薬、無化学肥料でしょうがを栽培しています。元々しょうがは病害虫に弱く、一般的に多くの農薬や化学肥料を多く使って栽培する植物です。しょうがの産地は四国・九州といった温かい地域が多く、東北での栽培は稀です。日照時間が短く年に一度しか栽培できないため、土を休ませながら丁寧に作ります。そんなしょうが作りには決して恵まれているとは言えない環境で、丸越農園はしょうがの有機栽培を開始しました。それには、しょうがの加工販売を通じて「より安心で安全な美味しいしょうがを消費者に届けたい」という丸越農園社長の思いが込められています。最初の3年は土づくりに費やしました。土壌に与える肥料は有機堆肥と三陸産の牡蠣殻のみ。草取りや虫の駆除は手作業で行われます。畑の見回りをして虫食いがあると一帯をごっそり抜いて焼き、畑を守るよう徹底しています。丁寧な土づくりの結果、丸越農園の土壌は良質の微生物を適量に含む好環境に仕上がっていることが土壌サンプルの検査にて証明されました。
長い間土の中で生育するしょうがは土壌の影響を受けやすいといわれています。手間をかけられて作られた有機しょうが。店頭に並ぶ価格は一般の国産しょうがの約3倍です。しかし、香の高さ、ピリリと締まった辛さは格別。夏は無加糖のソーダで割って自然派ジンジャーエールに。冬はお湯と少量の水溶き片栗粉で葛湯風に。有機しょうがで作られた「はちみつジンジャー果実酢」は、体を内側から健康にしてくれるような飲み心地です。