「雫石窯」の作者 大西完治さん(67歳)。 大西さんが、陶芸と出会ったのは一般的に陶芸の道を目指す多くの陶芸家たちほど、早くはありませんでした。 陶芸とは無縁の人生を送っていた大西さんが友人の勧めで初めて土を練ったのは平成5年。 本業にするつもりはなかったが、友人の奥様の「不器用な人ほど一生懸命になる」という言葉で一歩踏み出すことができました。 そんなきっかけで始めた陶芸に夢中になり、定年を迎えた平成14年9月から1年間、栃木県益子で修行に飛び込みました。 それから16年、地元雫石に工房を構え、陶芸教室も開きながら陶芸の楽しさを伝え、多くの「雫石窯」ファンを増やしています。
ゴツゴツとした厚地の器は益子の特長。 益子の粘土は、珪酸分が多く鉄分を含む可塑性に富み、耐火性も大きいものです。 益子焼では、この粘土を他の成分を加えずに使うため、やや厚手になりますが、それがかえってどっしりと手になじむ益子焼ならではのぬくもりを生み出します。 決して華美ではなく、ほっと心なごむ何ともいえない趣が魅力です。 色は、料理を引き立てる素朴で健やかな美しさの自然なグリーン系のベージュ。 また白い器は、わらを燃やした灰を混ぜて作った「雫石窯」オリジナルの色。 オブジェではない、実用的なものを・・・というコンセプトで、 シンプルなデザインではありますが、使いやすさを重視した形や細部への気遣いが感じられます。 カップの持ち手は、少し太めで持ちやすく、手にしっかり馴染んで使いやすいと評判。 たまごの卵黄と白身を分ける「黄身だけよ」や、納豆鉢やスープカップなど身近で使える作品ばかりです。 洗練、卓越というよりは、すこし愛嬌のある雫石窯の器。 自慢の手料理を盛り付けて、食卓に並べましょう。きっとたのしい食事の時間を過ごせると思います。